■はじめに
特殊清掃は、主に孤独死や事故現場、犯罪現場などの清掃を行う専門的なサービスです。このような清掃の依頼が特定の季節、特に夏や冬に増えることが報告されています。この現象にはさまざまな要因が関係しており、気温の変動や季節特有の生活習慣、さらには社会的要因が影響していると考えられます。本記事では、特殊清掃の依頼が夏や冬に集中する理由について、詳しく解説していきます。特殊清掃の現場で働く人々の声や、専門家の意見を交えながら、依頼が増える背景とその影響について考察します。特に、異常気象や高齢化社会がどのように影響を与えているのかを探り、今後の対策や予防策についても触れていきます。特殊清掃の重要性とその増加の要因を理解することで、より適切な対応が可能となるでしょう。
■そもそも特殊清掃とは一体なに？
「特殊清掃」とは、一般的な清掃とは異なり、特別な環境や状況で必要となる清掃業務を指します。この作業は主に、孤独死や自殺、事件現場などの人が亡くなった場所で行われ、血液や体液、腐敗臭などの除去が必要とされます。また、火災や水害、ゴミ屋敷の片付けなども特殊清掃に含まれることがあります。これらの現場では、一般的な清掃用品や方法では不十分であり、専門的な知識や技術、そして専用の機材や薬剤が求められます。特殊清掃の目的は、単に見た目をきれいにするだけでなく、衛生面や安全性を確保し、建物や周辺環境に及ぼす悪影響を最小限に抑えることです。作業には防護服やマスクの着用が必須であり、作業員の健康と安全にも十分な配慮がされています。特殊清掃は一般の清掃と比べて費用が高額になることが多く、その理由は作業の専門性やリスクの高さ、使用する資材の特殊性にあります。
■特殊清掃の依頼は夏と冬に多い！？
・夏に増える原因
現在日本では、少子高齢化が進んでおり孤独死の数も上昇傾向にあります。
孤独死で発見される多くが高齢者です。また、その死因に関しても夏場に発見される方の多くが「熱中症」が原因と言われています。ではなぜ高齢者が発見されるケースが多いのでしょうか？その理由として挙げられるのは、高齢者は加齢と共に代謝が低下してしまい、暑さを感じにくくなる事が原因と言われています。人間は体温が上がると身体の熱を外に放出するために汗をかくようにできています。しかし加齢と共にこの機能も年々低下し、そもそも「暑い」や「のどの渇き」にも気付かない事が挙げられます。暑さを感じないことから冷房機器を使用すること無く熱中症になってしまい、独り身で住んでる方が誰にも気付かれることなく意識を失い、そのまま亡くなってしまうケースが多いためです。
このような熱中症を防ぐためにもこまめに水分を摂取する事や冷房を適切に使用し室温を一定に保つ事が対策として挙げられます。
・冬に増える原因
特殊清掃の依頼が冬に増える要因には、いくつかの理由があります。まず、寒冷な気候が影響しています。寒さが厳しくなると、暖房器具の使用が増え、それに伴い火災事故が発生しやすくなります。また、冬季は一酸化炭素中毒やヒートショックなど、寒さが原因の事故も多くなり、これが特殊清掃の依頼を増やす一因となっています。さらに、年末年始の長期休暇中に孤独死が発見されるケースも多く、家族や親族が帰省した際に遺体が発見されることが多いです。これらの要因が重なり、冬季に特殊清掃の需要が増加するのです。こうした背景から、特殊清掃業者にとって冬は繁忙期となることが多く、迅速な対応と高い専門性が求められます。
■夏の特殊清掃が大変と言われる理由とは？
・遺体の腐敗が早い
暑い季節になると特殊清掃の依頼が増える理由の一つとして、遺体の腐敗が早まることが挙げられます。夏の高温多湿な環境では、遺体の分解が急速に進むため、異臭や体液の流出が早期に発生します。このため、腐敗が進むスピードが速く、清掃業者が迅速に対応しなければならない状況が多くなるのです。
遺体が腐敗すると、悪臭だけでなく、細菌やウイルスが発生しやすくなります。これにより、感染症のリスクが高まり、清掃作業が一層困難になります。また、腐敗が進んだ遺体は、床や壁などに深刻な汚染を引き起こし、清掃範囲が広がるため、作業が長時間にわたることも珍しくありません
・匂いがきつくなる
夏の暑い季節になると、特殊清掃の依頼が増える理由の一つに「匂いがきつくなる」という現象があります。通常でも遺体の腐敗スピードは1日から2日程度で進行していきます。
高温多湿の環境下では、遺体の腐敗が早まり、その結果として強烈な悪臭が発生します。室内の環境によっても変わってきますが、24時間以内に腐敗が進行するようになります。遺体は生前のように免疫力を体内に持たないため、細菌の増殖を止めることは出来ません。
体内のタンパク質が微生物により分解され、時間経過とともに体液、腐敗液として体外へ漏出してきます。
ご遺体から漏出した体液、腐敗液は空気中に蒸発、天井や壁、家具類へ付着し はじめお部屋全体に広がり、やがて家中、屋外へと広がっていきます。
特に夏場は、遺体が発見されるまでの時間が長くなることが多く、その間に腐敗が進行しやすいです。腐敗の進行が早いほど、発生する匂いも強烈になり、周囲の住民にとって大きな問題となります。この悪臭は単に不快なだけでなく、健康にも悪影響を及ぼす可能性があるため、迅速な対処が求められます。このきつい匂いはクリーニングでも消し去ることができないとまで言われています。
・虫が発生する
夏の特殊清掃が大変と言われる理由の一つは「虫の発生」です。夏場は高温多湿の環境が続くため、遺体が放置された場合、その腐敗が早まります。この腐敗過程で大量の体液や悪臭が発生し、これが虫を引き寄せる原因となります。特に、ハエやゴキブリといった虫が増えることが多く、これらの虫は腐敗物質を好むため、遺体の周辺に集まりやすくなります。ハエは遺体に卵を産みつけ、その卵が短期間で孵化してウジ虫が大量に発生します。このウジ虫はさらに腐敗を促進し、悪臭を一層強化します。ゴキブリもまた、腐敗した有機物を食料源とし、遺体の周りに大量に集まることがあります。
孤独死に関してはいつも一人暮らしの住宅に大量の虫が発生することで発覚するケースも少なくありません。
■特殊清掃の作業のながれとは？
①施主様からのお問い合わせ
不動産会社や管理会社、個人の方よりお問い合わせをいただきます。
②現地に赴きお見積り
現場となったお部屋を拝見、調査し大体の見積もり金額を作成します。
③清掃開始
施主の方と金額や条件について折り合いがついた際には、実際に清掃業務にうつります。
強烈な異臭に対応するためにも二酸化塩素を巻くことで消臭していきます。
人が亡くなった際の異臭は空気清浄機や芳香剤では対処できないものです。
特殊清掃の現場の匂いは家具や家財にもしみついています。その中から遺族の遺品を回収し必要なものと不要なものに分別していきます。発見が遅いと場合や夏場の気温の高い環境だと腐敗が進行しているケースが多いため、腐敗した遺体からの体液が床や畳、ひどいときは床下までしみわたるため薬剤で清掃・殺菌・消毒していきます。薬剤を使用しても落ちない場合には解体工事を行い、原状回復工事を行い修繕していくこともあります。他にもオゾン消臭器によって匂いの元を分解し消臭作業をしていきます。
④引き渡し
すべての作業が終了すると施主に引き渡しを行い、料金を請求します。
■まとめ
特殊清掃の依頼が夏や冬に増える要因には、いくつかの共通した理由があります。まず、夏は高温多湿の環境下で遺体の腐敗が早まり、臭いや害虫の発生が促進されるため、早急な清掃が求められます。冬は孤独死が増加する時期であり、特に高齢者が暖房を使わずに低温環境で亡くなるケースが多いため、発見が遅れがちです。ほかにもヒートショックでの死因が増加する事が挙げられます。さらに、年末年始の長期休暇中に発生する孤独死も多く、発見が遅れることが依頼の増加に繋がります。これらの季節要因に加え、夏と冬は気温や湿度の極端な変化があるため、特殊清掃のニーズが高まります。季節ごとの生活環境や社会的な要因が絡み合い、特殊清掃の依頼が増加するのです。したがって、これらの時期には迅速な対応と準備が重要です。
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